夢の図書館・マイコン博物館でレトロコンピュータを見てきた話

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ヴァル研究所 Advent Calendar 2021 10日目の記事です。

MaaS事業部 MaaS Platform Team の青山です。

先日、YouTubeでなにげなくレトロコンピュータの動画を眺めていたところ、こちらの動画にて夢の図書館なる施設の存在を知りました。なにやら古いマイコンや技術関連雑誌を大量に閲覧できるとのこと。
面白そうなので同僚のs_itohさんと東京・東青梅までお邪魔してきました。

本記事ではそこで個人的に興味を惹かれたものをご紹介します。

シャノンのリレー式コンピュータ

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シャノンといえば情報理論。理論家のイメージでしたが、ハードウェアも作っていたんですね!
このマシンはMinivac 6010。Minivac 601(Wikipedia)によるとシャノンが開発したMinivac 601の強化版のようです。

ADM-3

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ADM-3Aと言えばビル・ジョイが使っていた端末。

UNIXで「~」がHOMEを表すようになった起源であったり、

viが「hjkl」でカーソル移動するようになったのは、ADM-3Aにカーソルキーがなく「hjkl」にカーソル移動が割り当てられていたからと言われていたり、

gigazine.net

現在にも影響を残す端末です。

ADM-3A(Wikipedia)によればキーボードのhjklに矢印の刻印があったようですが、写真の端末にはないようです。別モデルでしょうか。
いわゆるロジカルペアリングで、コロンをタイプするのにシフトキーが要らないこと、Escキーが押しやすい位置にあることにも注目です。

VT100

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かねてから一度実物を見てみたいと思っていたVT100です。
私たちが今使っている端末エミュレータのカーソルキー移動・カラー表示などのエスケープシーケンスは、このVT100に由来します。

Altair 8800

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ビル・ゲイツがBASICを作ったAltair 8800。
BIOSなどなく、写真下部にあるスイッチでイニシャル・プログラム・ローダをセットするそうです。

Apple II

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「なぜApple IIは売れたのか?」と館長に質問したところ、「やはり出来が良かったから。値段も控えめだった」とのことでした。
Apple IIと言えば高価格のイメージでしたが、他と比べるとお手頃だったのでしょうね。
カーソルキーの左右があるのに上下がないのも理由が気になります。

Mystery House

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テキストアドベンチャーゲームの祖。
箱だけ(?)が無造作に転がっていました。

MITSUBISHI PSI

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Prologをハードウェアで実装したPrologマシン。
当時の価格500億円とのこと。

月刊『bit』

コンピュータ関連雑誌も多数揃っているようです。今回は共立出版が発刊していたコンピューターサイエンス誌『bit』を読んできました。
限られた時間でほんの一部にしか目を通せませんでしたが、個人的に気になった部分をご紹介します。なお、写真撮影もOKとのことでした。

  • ケン・トンプソン インタビュー(1990年1月号) 
    • 淡々とした事実が主で設計思想などはあまり語られていないのが残念ですが「抽象化は枯れた慣習みたいなものがあれば非常に良いが、そうでないとただの個人化になって理解が難しくなる」と言っているのが興味深いです。
  • リチャード・ストールマン インタビュー
    • けっこうお茶目で弱気な面もあるんですね。世間の流れに機敏で従うこともままあるというのが意外でした。
  • goto文は有害である論争(1975年5月号)
    • 座談会の模様が20ページ近くに及び掲載されています。賛否両論あり、当時、goto有害論は当たり前ではなく、大問題だったことが分かります。しかし「自転車置き場の議論」であるような気も…
    • 当時学生だったガイ・スティール・ジュニアも座談会にサラっと出てきます。
  • EmacsのE(機能拡張言語としてのGNU Emacs Lisp
    • ストールマンによると、単にEが空いている頭文字だったから選んだ。Editor with MACroSだと聞いていたけれど。Emacs命名が誰によるものかも要調査だと思いますが。
  • ガイ・スティール・ジュニア 講演(Scheme過去・現在・未来
    • Schemeはたいへん注意深く設計された言語であって、プログラミング言語のあり方についての十分な研究と理解に基づいたものであったと言えればよかったかもしれません。しかし、事実はぜんぜん違います。
    • Schemeと言えばコンパクトさと美しさと思っていたので意外でした。
  • ベストエフォートの語源(1997年5月号)
    • 1972年から73年にかけて、ビント・サーフがボブ・カーンとともにTCP/IPのコンセプトを作ったときに、ビントが「これはベストエフォート型だ」と述べている。「100%の保証はできないけれども、いかに100%に近づけるかで、TCP/IPのレイヤの一つひとつを設計した」と。
  • 湯川秀樹による巻頭言(1969年3月創刊号)
    • 情報やAIに対して保守的で、否定的ですらあるのが興味深いです。曰く「情報とて物質やエネルギーと切り離して論ずることはできない」「コンピュータ自身は人間のような高度の認識はしない。図形認識のような簡単なことさえ、現在のコンピュータによってたいへんな仕事である」
  • コラム「bit悪魔の辞典
    • 昨今お目にかかることができないほどのセンス(皮肉)に満ちた連載記事。面白すぎます!これだけでも単行本化してほしい。

まとめ

レトロコンピュータもYouTubeであらゆるものが動いている状態で見られる時代になりましたが、実物を見るのはやはり刺激的でした。

雑誌の知識もネットで調べられますが、大量の記事にざっと目を通すことができ、フックとなる情報の発見効率が良いと感じました。

興味を持たれた方はぜひ一度訪れてみてください。公式サイトから無料見学コースのお申し込みができます。20分間で各施設の概要を説明いただけるとのこと。
また、スタートセット(年会費+1日利用券)の購入は3,000円となっています(詳しくは夢の図書館 公式サイトにて)。

明日はBtoC開発チームの武正の記事です。

それでは、皆様ご機嫌麗しゅう。

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