駅すぱあとの「お出かけAI(β版)」開発の裏側

ヴァル研究所では2023年5月より、「お出かけAI(β版)」の提供を「駅すぱあと for web」にて開始しました。今回は開発に携わった2人のエンジニアが語る、お出かけAI(β版)開発の裏側をご紹介します。

開発者プロフィール

家田 怜(いえだ りょう)


MaaS事業部 toC Product Team 所属、駅すぱあと広告のシステム担当。
2012年に新卒でヴァル研究所へ入社し、駅すぱあと for Androidの開発を1年経験したのち現職。現在はWeb系バックエンドシステムの企画・設計・開発・運用に従事。
本業の傍らアジャイル推進委員会に所属し、ソフトウェア開発プロセス・チームビルディング・自動化・ファシリテーションなどを学び、委員会を通じて社内に発信したり業務に活かしている。

椎橋 章(しいばし あきら)


MaaS事業部 toC Product Team 所属、駅すぱあとアプリ・駅すぱあと for webの広告を担当。
2017年に新卒でヴァル研究所へ入社し、駅すぱあとに掲載するバスデータの作成や、企業向けの鉄道駅名の名寄せを担当。現在は、アプリのログデータを利用した集計・分析や、アドネットワークの数値改善業務に従事。

お出かけAI(β版) とは

OpenAI社が提供するChatGPTを活用し、ユーザーの希望に沿った施設を指定の所要時間で移動可能なエリアから見つけて経路まで提案してくれるサービスです。「駅すぱあと for web」のサブメニュー的に、試験的に公開しています。

出発地と行きたい目的地を入力

移動時間と出発時間を設定し、検索すると…

施設のある最寄り駅までの経路案内が表示された!

「お出かけAI(β版)」開発の経緯

当時社会的に話題となったChatGPTを自社の経路検索サービスと掛け合わせることで、今までとは異なる価値が提供できるのでは、という声が上がったのがきっかけです。その際はC向けサービスの開発に携わるエンジニアと、セールスチームのリーダーとで企画会議を行いました。

もともと大規模言語モデル(LLM)には興味があって調べてはいたものの、あくまでその技術を利用したサービスの「利用者」の立場での視点でした。この企画会議をきっかけに、サービスを作る側の視点に変わっていったように思います。

お出かけAIの開発では「開発」の枠を超えて、エンジニアとして非常に幅広く携わらせてもらいました。例えばChatGPTに投げて良い情報と、投げてはいけない情報について、自分でデータの利用規約を確認したり、社内の法務・知財を担当する部門に相談したり、ということもやっていました。

開発中に印象に残っていること

なんと言っても最新技術のAPIを使って開発できたことですね。開発を通して学びを得られたことはよかったと思っています。 一方でいくつかの壁にもぶつかりました。例えばChatGPTに投げるプロンプトを考える際、なかなか想定した通りの回答がChatGPT側から得られませんでした。利用するAPIを対話形のものに変更したり、サービスのバージョンを上げたり。新しいものなので試行錯誤をしながら進めていきました。

また、テスト段階では出てこなかったエラーがリリースの1週間前に頻発してしまったこともありました。その原因は明確ではあったものの、サービスの構成を変えざるを得ないほどの状況でした。

ヴァル研究所でよかったなと思ったところ

まずは人柄の良さが挙げられると思います。例えば今回の取り組みを進める中で、知財担当や広報担当とのやり取りがありました。WebミーティングやSlackなどでコミュニケーションを取っていましたが、和気あいあいと話を進めることができました。

また、プロジェクトの早い段階からエンジニアが参加できるのもヴァル研究所の良さだと思います。例えばサービス企画会議やサービス名称検討などに関わることで、仕事に対して自分ごととして取り組むことができると思います。

全体を振り返ってみて

今回はリリースまでスピードも求められるプロジェクトだったため、β版での公開となりました。まだ精度が高められる余地がある中でのリリースは心残りではあり、ユーザーからもTwitter(現・X)などで精度については意見をいただいているので、正式版として出せるようにさらなる改善を行っていきたいです。

この取り組みによって、お客様からお声がけをいただくこともありましたので、話題の技術を取り入れ、世に出したことの効果はあったと思います。

活用事例が少ない新技術をいち早く自社サービスに活用することでビジネスチャンスを獲得するというミッションの中で、自分たちも楽しんで開発に取り組むことができたので、貴重な体験ができて良かったです。